皆さま、こんにちは。 「酒と鰻と定食と。うなやま」店主です。
季節の移ろいとともに、吹く風にも初夏の気配が混じるようになってまいりました。
本日は、当店の品書きの中でも、とりわけ「地元への愛」と「和食の真髄」を詰め込んだ自慢の一品をご紹介させていただきます。
その名も、「みやじ豚の煎り酒仕立て重 定食」です。
単なる豚重と侮ることなかれ。
ここには、藤沢という土地が育んだ奇跡の食材と、江戸時代から続く日本独自の調味の知恵、そして鰻屋ならではの技が三位一体となって凝縮されています。
少し長くなりますが、この一膳に込めた「こだわり」の物語を、どうぞ最後までお読みください。
まず主役となるのは、地元・藤沢の誇りである「みやじ豚」です。
すでにご存知の方も多いかもしれませんが、この豚はまさに「奇跡の豚」と呼ぶにふさわしい逸品です。
一般的に豚肉の美味しさは「品種」で語られることが多いですが、みやじ豚の最大の特徴は「育て方」にあります。
ストレスを一切与えない環境で、まるで我が子のように慈しんで育てられた豚は、その肉質において他の追随を許しません。
一口頬張れば、まず驚くのはその「脂の甘み」です。
重たさが全くなく、スッと溶けるような口溶け。
それでいて、赤身の部分には濃厚な旨みがギュッと詰まっています。この「旨みの密度」こそが、私たちがこの豚を選んだ最大の理由です。
「本当に美味しい豚肉は、脂が飲み物のように清らかである」 みやじ豚を口にするたび、私はその事実を確信します。
この最高級の豚肉を、どのような「仕立て」で召し上がっていただくか。
試行錯誤の末に辿り着いたのが、江戸時代の食卓を支えた最古の調味料、「煎り酒」でした。
醤油が普及する前、日本人が愛してやまなかった「煎り酒」は、日本酒に梅干しと鰹節を合わせ、じっくりと煮詰めて作られます。
なぜ、醤油でもなく、タレでもなく、煎り酒なのか。
それは、「みやじ豚の繊細な甘みを最大限に引き出すため」に他なりません。
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酸味の共鳴: 梅干しの爽やかな酸味が、豚の脂の甘みをさらに際立たせ、後味を驚くほど軽やかにします。
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出汁の深み: 煮詰めることで凝縮された鰹節の旨みが、肉の力強さに寄り添います。
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日本酒の芳醇さ: 厳選された日本酒からくる風味が、肉の雑味を消し去り、高貴な香りを纏わせます。
焼き上げたみやじ豚をこの煎り酒にくぐらせ、香ばしく重箱に敷き詰める。
醤油の強さに頼らない、素材本来の個性を「引き算」で輝かせる。これこそが、大人のための究極の贅沢です。
当店の屋号に「定食」と掲げている以上、お重の横を固める副菜にも一切の妥協は許されません。
この御膳は、お重を含めた一つの「コース料理」として完成されています。
■ 鰻の茶碗蒸し 鰻屋としての矜持を込めた一品です。
丁寧に引いた出汁の香りと、とろけるような卵の質感。
その中に、ふっくらと蒸しあげた鰻を忍ばせました。
一口ごとに広がる滋味深い味わいは、お重の合間の最高のアクセントとなります。
■ うざく(鰻と胡瓜の酢の物) 香ばしく焼き上げた鰻と、シャキシャキとした胡瓜を三杯酢で和えた「うざく」。
煎り酒の酸味とはまた異なる、酢のさっぱりとした清涼感が、口の中をリセットしてくれます。
■ 自家製漬物とお吸い物 旬の野菜を使い、店内でじっくりと漬け込んだ自家製のお漬物。
そして、澄み渡るようなお出汁。
これら基本の「和」がしっかりしているからこそ、メインの豚重がより一層引き立つのです。
私たちが「酒と鰻と定食と。うなやま」を営む上で大切にしているのは、
「日常の中にある、ささやかな、けれど確かな贅沢」をご提供することです。
特別な記念日だけでなく、ふとした日常の昼下がりや、一日の終わりの労いに。
藤沢の豊かな自然が育んだ食材と、先人たちが守り抜いてきた調理法が出会うことで生まれる、驚きと感動。
この「みやじ豚の煎り酒仕立て重」には、私たちが大切にしたい価値観がすべて詰まっています。
一口食べれば、きっと分かっていただけるはずです。
「ああ、日本人でよかった」
「藤沢に、こんなに美味しいものがあるなんて」
そう感じていただける瞬間こそが、私たちの何よりの喜びです。
こだわりを語れば切りがございませんが、百聞は一見に如かず。
ぜひ一度、当店の暖簾をくぐり、この至高の一膳をご賞味ください。
お米一粒、出汁の一滴まで。
店主、そしてスタッフ一同、心を込めてお作りいたします。
皆さまのご来店を、心よりお待ち申し上げております。